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保坂祐樹という投手

週末になると勉強の負荷が落ち、図書館も早く閉まってしまうので、平日に比べて疲れ方が足りず、よく眠れなくなる。今日もその状況に陥ってしまったので、ベッドに横になりながらiPhoneで去年の夏の甲子園の動画を観ていた。Youtubeだと10分以内の長さの動画がたくさん転がっているので、バスの待ち時間や眠れないときなどはよく動画を観て暇を潰す。よく観るのは漫才と甲子園のドキュメンタリーなどで、短時間で笑ったり感動したりできるのでとても良い気分転換になる。

既に何度も観たものなのだが、今日は2011年の夏の甲子園でベスト16まで進んだ秋田・能代商業の動画を観ていた。この高校を特にひいきにして観ているのは、推薦枠や有名な指導者を持たず、ほとんど地元能代市出身の選手で構成されているからだ。野球エリートが揃った高校の野球はもちろん面白いのだが、熱闘甲子園やニュース番組の紹介VTRなどで紹介されたとき、スター選手不在の中から努力で県大会優勝を勝ち取って甲子園に出てきたチームの方が、ドラマがあって熱中できる。

能代商業はまさにそういうチームで、身長171cm、57kgという一般の高校生よりも少し小さい体格のエースである保坂祐樹という投手が、県大会緒戦から全て完投して勝ち上がってきた。この投手は体格のハンデもあり、急速が130kmほどしか出ないのだが、キレのあるストレートでコーナーや内角高めを突き、スライダーを効果的に利用して野球エリート揃いの強豪校の打者を三振や凡打に仕留めてしまう。相手チームの投手には超高校級と目されるような選手も含まれていて、140km台後半で投げてくるのだが、打線が辛うじて勝ち取った数点の得点を見事に完封や完投で守りきってしまう。

この保坂祐樹という軟投派左腕は、2010年の夏の甲子園で2年生エースとして全国大会に登場したのだが、鹿児島実業相手に2回でノックアウトされ、チームは15-0で惨敗するという経験を持っている。1年間その悔しさを忘れず、同郷で青山学院大からヤクルトに進んだ石川雅規という、同じく軟投派の左腕の配球を研究し、全国クラスの強力打線を抑えられるだけの力を1年間で身につけたそうだ。

自分の失敗に真摯に向き合い、それを克服するために努力し、偉業を成し遂げた精神力はすさまじい。しかも、エリート揃いでない高校である故に起きる数多くの致命的なエラーを受けてピンチになっても、笑顔を絶やさず内野守備陣を自ら盛り立てる。また、エリート揃いでないだけに、打線も打順上位の選手を除いては貧弱なのだが、3番打者として自ら打点を稼ぎ、勝利に結びつけてしまう。野球センスはもちろん抜群だとは思うのだが、決して速くはない投球で打者を打ち取れるようにピッチングを磨いた努力を惜しまない姿勢と、野球に対するインテリジェンスにもの凄いものを感じる。加えて、ピンチにもめげないだけでなく、周囲に気を配れるだけの精神力も持ち合わせている。

保坂祐樹選手は県内のトップ校を狙える学力を持っていたものの、野球がやりたいということで能代商業に進んだそうだ。卒業後は推薦入試で合格した中央大学の準硬式野球部に入学し、勉強を優先させるそうだ。教員免許を取得して、高校の野球部を指導するという目標があるのかもしれない。どこまでも芯が通っていて、大人びた考えのできる選手だ。インタビューの受け答えもしっかりしていて、グランドの中でも外でも好感が持てる。

ブログの本来の趣旨と関係ない投稿だったが、実物を映像で観たということもあり、これまでに読んだ開発系や金融系のどんな本の著者のメッセージよりも感動したので、書いておくことにした。一回り年下の人の姿勢から学ぶのは少し情けないが、少しでも近づけるよう努力したいと思う。
by UbuntuK | 2012-02-11 19:42 | 雑考
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