カテゴリ:書評( 11 )

Monkey Business: Swinging Through the Wall Street Jungle

John Rolfe / Warner Books

ハーバード/ウォートンビジネススクールを卒業した20代後半の2人の若者がDonaldson Rufkin & Jenretteという投資銀行でアソシエイトとして働いた経験を皮肉なユーモア混じりで書いた本。2人はMBAの1年生終了後にサマーインターンとしてDLJで働き、卒業後2-3年を投資銀行本部のアソシエイトして過ごした。投資銀行らしい鉄の上下関係や、プライベートの全くない時間の過ごし方等に対して著者が吐く不満は、投資銀行の若手職員の事情を知っている者なら誰もが共感するだろう。大学時代に一度訳本(『ウォールストリート 投資銀行残酷日記』、主婦の友社)を読んだことがあったが、大学院生として著者とほぼ同じ立場にいる現在の自分として読んだ方が、共感できる点が多く面白かった。投資銀行に関する書籍は、大抵がMDクラスやパートナークラスの書いた業界本やビジネス書だったりするが、この本は「アナリストやアソシエイトレベルの若手職員が実際に投資銀行で行う業務や生活の実態」を理解できる点で、他にはない価値を持っている。文体は平易で、とても笑えるユーモアがちりばめられているが、多用される下ネタの部分はやり過ぎ感があってあまり笑えない。

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by UbuntuK | 2011-09-16 20:58 | 書評

入社1年目の教科書

岩瀬 大輔 / ダイヤモンド社

 ライフネット生命副社長の岩瀬大輔氏による著作。仕事における3つの原則と50のアドバイスで構成されており、それぞれに数ページの説明が施されている。3つの原則とは、1. 頼まれたことは、必ずやりきる、2. 50点で構わないから早く出せ、3. つまらない仕事はない。著者はBCG、リップルウッドと外資系企業での勤務経験しか持たないが、日本の企業で働く社会人1年目の立場に立ち、とても有益なアドバイスを行っている。

 入社1年目の社会人はこれをバイブルとして全て実践するよう心がけ、入社2年目以降の社会人はチェックリスト的にこれを用い、実践できていないポイントを埋めるように仕事に取り組めば良いのではないかと思う。自分自身も社会人経験が5年ありながら、本書を読んではっとさせられる部分がいくつかあった。具体的には、17. 情報は原典に当たれ、35. 目上の人を尊敬せよ、41. 宴会芸は死ぬ気でやれといったもの。はっとさせられた部分以外にも、自分が考えて実践していたことと重なるアドバイスが含まれており、「これを続けて行こう」という励みと自信につながった箇所があり、その点でも有益だった。こちらは28. ペースメーカーとして、資格試験を申し込む、36. 感動は、ためらわずに伝える、49. 何はともあれ貯蓄せよ、といったもの。

 自分が入社1年目だった頃にも研修の事前予習教材として読んだ本があったが、自分の全く知らない人の著作だったし、本に書いてあったその人のバックグラウンドもかなり怪しいものだった。この本は、「この人が言うのなら」と思える点で説得力が増すし、内容もうなずける部分が多いので、各アドバイスをスムーズに受け止めることができる。唯一のマイナスポイントは、著者へのインタビューをまとめる形でライターが文章を代筆していること。この事実を正直に書いている点は好印象だし、著者が非常に忙しいことも分かるのだが、自筆で書いてくれていれば皆もっと信頼を持てるのに、と残念に思った。よって4点。

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by ubuntuk | 2011-06-18 20:23 | 書評

ブルー・セーター――引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語

ジャクリーン ノヴォグラッツ / 英治出版

 途上国の貧困層向けにビジネスを行う事業会社を対象に投資活動を行うアキュメンファンドのCEOによる回顧録。題名のブルーセーターは著者が高校生のときに古着屋で売った服を指し、何年後かにアフリカですれ違った少年がそれを着ていたというエピソードに基づく。この偶然の出来事を通じて先進国の途上国の繋がりが想像以上に密接であることを示そうとしているものと思われる。

 内容はルワンダでのミクロレベルの開発援助活動を中心に書かれており、そこでの成功体験と、大虐殺を経て退廃した同国内で生活する著者の元協働者達が体験した苦痛や変貌が語られている。あとがきではこの経験を詳細に記述しておくことを目的にして書かれた本であるとのことで、それに現在のアキュメンファンドの活動や著者の経歴等が前後に加えられる形になっている。

 最後に記載されたアキュメンファンドの活動では、具体的な投資先の紹介が為されていて、アキュメンファンド自身がどのように人材育成、投資先選定とそのリターン確保を行っているのかを理解することができる。アメリカでは多くのNGOや途上国支援向けファンドが活躍している一方、日本では馴染みが薄いため、本書がそうした機関の根幹を成す理念や活動内容を示すことで、日本の開発援助の在り方を考える上で参考になる部分があるのではないかと思う。

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by ubuntuk | 2011-05-09 16:11 | 書評

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

服部 正也 / 中央公論新社

日本銀行から国際通貨基金を通じてルワンダ中央銀行の総裁を務めた著者による当時の回想記。著者は1年間の約束で現地に赴任したが、ルワンダの大統領の要請で通貨改革その他の計画、実施とその後の経過を確認するまで総裁の地位に留まってほしいと要請され、6年間現地で業務に取り組んだ。ベルギーから独立して間もない小規模な発展途上国であるため、中央銀行に勤務する部下の数も能力も限られているなかでの任務となり、業務を軌道に乗せるまでの過程で困難を強いられている様子が詳細に記述されている。著者の任務の重要部分を占める通貨改革の実行に当たっては、大統領の命により全て1人で立案し、国際通貨基金の了承を得て実行するという重大な責任を負っていたとのことである。

 本書が伝える著者の印象として最も感銘を受けたのは、著者が常に公正な立場で業務に臨み、職業人としての姿勢を貫いたことである。著者は、自分自身の業績の中で優れている点として、就任当時既得権益をむさぼっていたベルギー系の商人等の権利擁護を目的とする進言を無視し、ルワンダ国民の意見と自分自身の判断のみによって改革を立案、実行したことを挙げている。実際、任期終了時には、大統領を始めとしてルワンダ人の政府関係者だけが著者の自宅に集い、大統領による謝辞を受けている。また、業務内容に問題のある部下を罷免するなど、決断を要する場面でも私的な感情を排して公正な判断を行っている。部下との関係は努めて距離を置くようにし、重大な過失を部下が行った場合には躊躇なく解雇を通告している。解雇等、職務上の厳しい判断は日本人が得意とするところではないと思われるが、著者は個々に対する特別な配慮を排して冷徹な判断を下している。

 中央銀行総裁としての業務における判断力、実行力においても特筆すべきものがある。著者は自分自身が判断を下す前に徹底的に情報やデータの調査を行い、自信を持って方針を決定し、それを実行に移す際には周囲の批判等に流されず、当初の意思を貫いている。ルワンダを牛耳る外国人既得権者からの圧力は少なからずあっただろうし、大統領に命じられたことから誰にも改革の内容について相談できないという制約もある中、自分の考えだけを信じて方針を貫き通すのは簡単なことではないと思われる。その中でも自分自身の分析能力と結果を信じて業務を完遂した事実から、凄まじい信念と意志の強さを感じる。

 文章そのものは中央銀行総裁として携わった通貨切り下げとそのための経済改革 を振り返ったテクニカルで淡々としたものだが、その背後に感じ取れる一職業人としての意識の高さが読者に強い印象を与える。本書の刊行は1972年で、その後年月を経て絶版となり、著者は1999年に亡くなったが、読者からの要望に応えて再版が決定されたとのことである。読書からの要望が今だにあるのは、ルワンダが大虐殺の関連で注目されているという理由が強いと思われるが、本書で窺い知れる著者の国際社会での活躍と、その背後にある職業人としての人格が魅力的であるという理由もあるのではないかと感じた。

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by ubuntuk | 2011-04-01 06:57 | 書評

フージーズ――難民の少年サッカーチームと小さな町の物語

ウォーレン セント ジョン / 英治出版

米国ジョージア州アトランタ郊外のクラークストン市で活動する難民少年サッカーチームについて、ニューヨークタイムズ紙の記者である著者がドキュメンタリーとして書いた本。単にサッカーチームの日々を追うだけでなく、各選手が難民としてクラークストンへ来るに至った経緯をジャーナリスティックに描いている。コンゴ民主、スーダン、コソボ等、選手が難民として祖国を捨てざるを得なくなった各国の紛争の経緯や、各選手とその家族がその中でどのように難民として渡米する権利を得、現在に至っているかを政治的視点と難民個別の視点から詳細に取材し、説明している。

難民それぞれの背景に留まらず、 サッカーチームの運営上の困難として立ちはだかるクラークストン市長、YMCA担当者、治安の悪い同市内で起きる犯罪等に関する入念な取材に基づく記述もジャーナリストならではという内容になっている。主題となるサッカーチームに関する情報に留まらない情報収集は、記者としての職務に就いている著者によってこそ可能になったものであると思う。

サッカーの試合に関するシーンは頻繁に登場し、ページ数が割かれている分臨場感もあって興味深く読めるが、読者としてより興味を覚え、恐らく著者が本書を通じて最も伝達したかったことと考えられるのは、個の力では覆し得ない暴力や圧政によって異なる場所で人生を送ることを余儀なくされた人々が懸命に生きようとする姿である。主人公的な存在として本書で扱われるサッカーチームの女性コーチも、難民の少年達をサッカーに熱中させることで地元ギャング等による危険から守ろうという意図を持って活動している。

難民の少年達とその家族は、祖国で父親が暗殺または投獄されたり、近隣住民が殺されたりする中を辛うじて逃げ、難民キャンプに到着して移住を待っていたという経緯を持つ。そうした少年達にスポットライトを当てている本書は一見弱者救済という美談で片付けられるルポに感じられるが、その実はより現実的で、国際紛争がもたらす悲惨な弊害と、それに影響を受けた難民達が移住先でもなお苦しみながら日々を生きなければならない問題を読者に向けて提示しており、内容に幅(各選手の祖国における逸話とクラークストン市での生活)と深み(入念な取材に基づく国際紛争やクラークストン市政、各選手の心情や家庭環境の詳述)の両方が存在する。

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by ubuntuk | 2010-11-13 14:28 | 書評

Mathematical Methods for Economics (2nd Edition) (Addison-Wesley Series in Economics)

Michael Klein / Addison Wesley

 Fletcher Schoolに在籍していたことのある国際経済学者Michael Kleinによる経済数学の教科書。数学の教科書の割に文章による説明が多く、初学者にも理解しやすいよう書かれている。一方で練習問題の解答が不十分であり、独学で問題演習をこなそうとする場合に難が出る。教科書の構成や説明内容は良いが、履修者が演習問題を一人でこなし、解答力を付けることを目的とする必要がある。

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by ubuntuk | 2010-10-24 14:31 | 書評

Principles of Economics

N. Gregory Mankiw / South-Western Pub

 ノーベル賞経済学者Gregory Mankiwによる経済学の入門書。需要供給曲線、労働、モノポリー、為替レート、国家収支等について、マクロ・ミクロ経済を学ぶ前の学生が理解できるよう書かれている。マクロ・ミクロ経済の詳細には触れていないため、経済学入門と題されるような初歩的講義で利用される教科書と考えるのが正しいと思う。

 本書は800ページを超える内容だが、説明の多くは新聞記事の抜粋や、スポーツ選手、俳優等学生に馴染みの深い事例を交えたカジュアルな内容に割かれていて、分量並みの知識量が盛り込まれている訳ではない。全くの初歩から経済学を学ぶ学部の1年生等には適した教科書だとは思うが、経済学の勉強を更に深めるための土台としては、内容として物足りなさを感じる。冗長な具体例も、かえって端的に全体像を掴みたいと考える読者の意向を阻害するものであるように思える。

 価格面でも定価約230ドルと、内容に比して高めである。同等かそれ以上の知識を得るのであれば、証券アナリスト一次試験の「経済」の対策本等の方が、よほど安価で有用な内容が盛り込まれている。大学院入学時に受験した経済学入門科目の履修免除適性試験の対策として利用したが、時間を割いたなりの学習効果は薄かった。英語の教材を利用するにしても、ソフトカバーでより分量の少ない入門書の方が、絶対的な質という意味でも、コストパフォーマンスという意味でも優れていると思う。

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by ubuntuk | 2010-09-13 14:38 | 書評

アメリカン・ロイヤーの誕生―ジョージタウン・ロー・スクール留学記 (中公新書)

阿川 尚之 / 中央公論社

 ジョージタウン大学ロースクールでJD(Juris Doctor、法学博士)の学位を取得し、ニューヨーク州弁護士の資格を取得した著者による留学体験記。アメリカの司法システムにおけるロースクールの位置付け、ロースクールでの生活等を広くカバーする形で紹介している。アメリカのロースクールのシステムや司法試験の在り方は日本と大きく違うため、読んでみて非常に参考になった。

 特に印象深かったのは、ジョージタウンロースクールに通う黒人学生の立場。著者の同級生の黒人の多くは教育レベルの違い等から司法試験に合格できない者が多く、成績優秀者のみが参加できる大学院の機関誌ロージャーナルの編集委員になる者も皆無だったという。オバマ大統領が黒人として初のハーバードローレビューの編集長になったという経歴が自身の大統領就任時に取り沙汰されていたが、こういった経緯がある中では確かに革新的な出来事であったことを実感できる。

 合格率が極めて高いアメリカの司法試験制度の中では、出身ロースクールやそこでの成績が就職に際して重要になるため、必然的に出願や学内での競争が激しくなるというのは納得である。ノンネイティブとして厳しいロースクールの競争の中で必死に取り組んでいる著者の姿勢は、単なる留学体験記を超えて読者の心を打つものであると思う。成績優秀者に値するクム・ラウデを12点中あと0.5点の差で取り逃がしたことについて読んだときは、その悔しさに共感を覚えた。

 ノンネイティブスピーカーの日本人がアメリカ人の学生と同じ3年間のJDコースを履修することは稀で、多くは学部での法学士取得者が1年のLL.M.に参加するため、JDにおける生きた経験を知ることができて良かった。これからアメリカでLL.M.取得等を目指す日本人学生に取っては、参考になる点が数多くあると思う。

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by ubuntuk | 2010-08-30 05:15 | 書評
書評群その3です。
これまでは自分用のメモとして書いていたので、今後はもう少し具体的に記述します。

コロンビア大学院で考えた世界と日本―日本人留学生10人の提言

はる書房

コロンビア大学国際公共政策大学院の卒業生がそれぞれの専攻分野に関する考察を端的にまとめ、大学院の概観を紹介した本。それぞれの文章は興味深く読めるが、大学院そのものの全体像を把握するには若干散文的すぎてまとまりに欠ける印象。

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国をつくるという仕事

西水 美恵子 / 英治出版

元世銀南アジア担当副総裁の雑誌連載記事を集めて出版された本。インド、パキスタン、スリランカ、ブータン、モルディブ等、南アジア地域に著者が出向き、現地の首脳や草の根の民衆との体験を具体的に記している。各々の体験をした際の著者の感情が詳細に記載されており、共感できる。

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アフリカ 苦悩する大陸

ロバート ゲスト / 東洋経済新報社

エコノミスト誌現地駐在員によるアフリカ各国の諸問題に関するルポ。ジャーナリストの視点で描かれているため、アフリカの政治・経済の暗部を批判的なトーンで記述している。楽観的なトーンで書かれた『アフリカ 動き出す9億人市場』とのコントラストが興味深い。

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アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで (中公新書)

吉原 真里 / 中央公論新社

アメリカの大学院で研究者を目指して取り組む人のために書かれた本。専門職大学院で勉強する人を対象とする本が欲しくて買ったが、対象とする読者が異なっていたため、ニーズに完全に合致する内容ではなかった。博士課程に進み、教授としてのポストを得ることを目標にしている人には適した本。

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合衆国再生―大いなる希望を抱いて

バラク・オバマ / ダイヤモンド社

著者が大統領就任以前に経験したコミュニティオルガナイザーとしての職務、選挙戦、上院議員時代、家族との関係等について追想録的に記述した本。職歴を通じて持ったアメリカ社会に対する問題意識や失敗経験等が克明に語れていて興味深く読める。

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by ubuntuk | 2010-05-10 02:54 | 書評
書評群その2です。


ゼロからのMBA

佐藤 智恵 / 新潮社

NHKの記者を辞めてコロンビア大学のビジネススクールに留学した人の本。留学を思い立った時点から卒業するまでの経験を、失敗談も含めて分かりやすく正直に書いている。大学院留学について初めて具体的に考えるきっかけとなった本。

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ムハマド・ユヌス自伝―貧困なき世界をめざす銀行家

ムハマド ユヌス / 早川書房

マイクロファイナンスという開発金融の手法をグラミン銀行の創設によって立ち上げたムハマドユヌスによる自伝。バングラデシュの貧困層の問題を分析し、発展のための支援スキームを模索して実行に移し、軌道に乗せるまでの過程を記述している。自分の決断を遂行する強い意志に感銘を受ける。

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プライドと情熱―ライス国務長官物語

アントニア フェリックス / 角川学芸出版

元米国国務長官コンドリーザ・ライスの半生を著者が取材等から記述した伝記的書籍。幼少時から大学に進学するまでずっとピアノに没頭していたライスが音楽で挫折し、スタンフォード大学の教授を経て国務長官になるという多様なストーリーを含む人生がコンパクトに記載されていて面白い。

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ハーバードで語られる世界戦略 (光文社新書)

田中 宇 / 光文社

ジャーナリストである田中宇と、同氏の妻であるJapan Times記者大門小百合が、大門がケネディスクールのフェローとしてハーバード大学に滞在した1年間に聴講した講演等を元に同大学のスタンス等に関する考察を行った共著書。異なる立場を持つ両者がそれぞれの観点から記述を行っている点、それぞれにジャーナリストの職業的立場を持ちながらも聴講者の立場として自由に論述している点で面白みがある。

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by ubuntuk | 2010-05-10 02:51 | 書評
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