Fletcher考察: ⑦ Fletcherと日本人

Fletcherと日本との関係は極めて良好である。Fletcherに在籍する留学生の中で日本人は最大であり、日本とともにTop 5を形成する韓国、トルコ、イギリス、メキシコ国籍の学生と比べても格段に人数が多い。これは日本の学生が優秀だからというよりは、日本政府やスポンサー企業と良好な関係を維持したいという意図がFletcherにあるためと思われる。

日本人学生の大多数は政府または政府系機関からの派遣で留学して来ている。民間企業出身者は少ない。出自が政府機関に偏ってはいるものの、各学生の所属先は多様である。自分が在籍した2年間の中で共に学生生活を送った3学年の政府機関出身者の派遣元は、外務省、財務省、経済産業省、防衛省、環境省、農林水産省、警察庁、水産庁、海上保安庁、日本銀行、DBJ、JICA、JETROと、多岐に亘っている。

Fletcherは日本銀行理事を務めた緒方四十郎氏のパネルや、日立製作所の磯辺朝彦氏を記念して作られたIsobe Room、同じく日立製作所が支援するHitachi Center for International Affairs等が設置されている。また、笹川平和財団も支援を行っており、日本人や日本の組織によるFletcherに対する支援は多いようだ。

日本人学生を多く受け入れてもらえるのは、支援を行っているからという理由だけではないと思う。日本人の学業成績が他国の学生に比して極めて低ければ、合格人数が削られることもあるだろう。しかしながら、日本人学生の成績は比較的良いようで、そこは問題になっていないと思われる。ビジネススクールのようにクラスでの発言が成績の半分を占めるようなカリキュラムでは、日本人の活躍は難しいかもしれない。バブル期に日本人学生を多く受け入れたトップビジネススクールは、現在では日本人の留学生の合格を相当絞ってしまっているようだ。それに比べると、試験やペーパーを中心とする日本人に不利になりにくいカリキュラム構成を採っているFletcherは、日本人が能力を発揮しやすいかもしれない。

国際関係大学院の中では留学生にTOEFLやGREであまり高いスコアを要求しないという点も、Fletcherに日本人が受け入れてもらいやすい要因である。TOEFLについては、公式には100点としている点数のハードルを下回っていたとしても、合格が出るケースは多くある。GREは、「日本人はMathの点数が良いことは分かっているし、語学能力はTOEFLで見るので、Verbalが仮に350であっても気にしない。」とAdmissions Officeのディレクターがキャンパスビジット時の面談で名言していた。Harvard KSGは留学生の選考基準にVerbalで400点、Mathで800点、TWEで4.0というスコアを設けているそうなので、それに比べるとハードルが低いと言える。印象では、Georgetown MSFS、Johns Hopkins SAISも同等かそれ以上のスコアを求めているようである。一方でColumbia SIPAはFletcherと同様の基準を設けているようで、SIPAとFletcherに合格というケースは多いようだ。Fletcherの合格者レセプションに来ていた人のうち何人かは進学先をSIPAと迷っており、最終的にSIPAとFletcherに進学者が割れるという結果になっていた。

Fletcherは日本人出願者の共通テストに対する期待値がそれほど高くないものの、職務経験、海外経験についてはある程度詳細にチェックしているようである。特に、政府機関のような公共性の高い勤務先で国際交渉や海外プロジェクトの経験を積んでいる出願者は、好んで合格させているように思われる。一方、ビジネススクールであれば喜んで受け入れてもらえるような、民間企業で輝かしい経験を積んだ出願者であっても、出願書類の内容がFletcherの審査基準に合致していなければ、不合格やWaitlist入りになることもあるようだ。

どのような事情があるにせよ、日本人出願者の留学がビジネススクールを筆頭に困難になっている昨今、日本人を好んで受け入れてくれることは大変ありがたいことだ。出願を検討しているがTOEFLやGREのスコアに自信がないという場合でも、国際性や公共性のある業務を政府機関等で十分に積んできた出願者であれば、合格可能性は十分にあると思われる。もちろんTOEFLの点数が低ければ低い分だけ入学後に苦労することにはなるが、入学して様々な課題に追われる中で、保有するスコアに関係なく語学力を伸ばしていると思う。自分自身もTOEFLは100点を少し超えた程度のものなので偉そうなことは言えないが、何とかなってはいる。
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