Fletcher考察: ⑤ Fletcherと校風

Fletcher校風は、コミュニティという言葉で表現される。これは学生が非常に親密な関係の中で学生生活を送ることを表している。国際関係大学院は専門職大学院の中ではどこも規模が小さく、1学年100人未満のPrinceton WWSやGeorgetown SFSを筆頭に、比較的少人数で密度の濃い学生コミュニティを形成する。Fletcherの人数は1学年200名強で、内訳はMALDが175名程度、MIBが30人程度、LLM、MAがそれぞれ10名強程度となっている。1学年の人数は国際関係大学院の中では平均的だが、学生間のコミュニティ意識を醸成する校風が他校に比べて強いと言われている。

一方で、大学院側が公式にこうしたコミュニティ作りを促している訳ではない。週1回のSocial Hourという学生の懇親会などが用意されてはいるものの、他の国際関係大学院に比べて目立ったコミュニティ作りの活動がなされている訳ではない。また、GPAを正式に発表して順位を付けるということを行わず、競争よりも協業を促すという明確なスクールポリシーはあるが、それのみがコミュニティ意識醸成の強い根拠となっている訳ではないと思われる。それでも、より少ない人数のプログラムを持つ大学院に比べて、Fletcherは学生同士の仲が良く繋がりが強いと言われることが多い。自分自身もキャンパスビジット時に在校生から親切に対応してもらったし、Fletcherにキャンパスビジットをしたことがある他の大学院の学生のブログにも、学生が皆Politeでにこやかと書かれているものがあった。

何がFletcherの学生の雰囲気を作り出しているのかは明確に分からないが、個人的には下記の3点がFletcher特有のものとして存在しているように思われる。1点目は国際関係大学院に共通していることであるが、差別や格差の是正に関心を持ち、卒業後はそうしたテーマを実現できる進路を選択する学生が多く集まっていることである。そうした意識を持つ出願者はFletcherのみならず他の国際関係大学院にも出願する訳であるが、少なくとも意図的に学生間の競争意識を持たせる一部のビジネススクールに集まる学生とは異なる価値観の元に入学してくる学生が多いのは事実であると思う。いずれの分野で仕事をするにしても社会に出れば厳しい競争に晒されることは間違いないので、ビジネススクールが意図的にその状況を学内に作り出すのは納得がいくし、Fletcherのように協力的に仲良くやっていくことだけが良いとは決して思わないが、少なくとも国際関係大学院には競争によって生じる歪みを是正したいという意志を持った学生が多く集まるので、その中で生じるコミュニティは必然的に友好的で協業的なものになるのではないかと思われる。

2点目はFletcherのAdmissions OfficeのFletcherの出願プロセスで特に他校と違う点として、自分自身の人間性に関するエッセイをStatement of Purposeに加えて提出させるという事実がある。このエッセイを通じて、Fletcher特有のコミュニティに馴染み、ポジティブな形で貢献できるということをスクリーニングしているのかもしれない。このプロセスが詳細に行われているのであれば、友好的な人格を有した学生がFletcherのコミュニティ意識を受け継ぎ、自分達の学年においてFletcherらしいコミュニティを創造していくということはあり得る。ただ、これを強く行い過ぎると、人種や国籍を越えた人間性という面での多様性は失われてしまうように思う。もしかするとある程度尖った人格を持った学生が将来どこかの国のリーダーとなって社会に多大な貢献をするかもしれない。人間性のスクリーニングがどこまで強く意識して行われているのかよく分からないが、少なくともFletcherが特有の友好的なコミュニティを形成している一因ではあるように思う。

3点目は合格者が大学院を選択する際の意識だろう。多くの学生は出願校の中から複数の合格を得て、カリキュラムや校風を総合勘案して進学先を決定する。学生が合格校それぞれを同等のレベルと考えるのであれば、最後は校風で判断するかもしれない。コミュニティ意識が強いという評判を持つFletcherの校風をウェブサイトやオープンハウスを通じて知り、それを是としてFletcherを進学先として選択する学生が学年を形成すれば、自然とFletcherの伝統的なコミュニティが新しい年度にも受け継がれることになる。この選択過程で「プラクティカルに授業に集中したい」という意思を持った合格者は専門学校的要素が強いと言われるJohns Hopkins SAISを選択するかもしれないし、「学年全体としてのコミュニティ形成は難しいが、科目や教授陣、学生の厚みがある大きなスクールで勉強したい」という学生はColumbia SIPAを選択するかもしれない。

Fletcherのコミュニティ意識がどの時点で形成されたかは定かではないが、実際に存在することは他校との比較でも間違いない。これを価値と捉えるか問題と捉えるかは、合格者の判断次第だろう。もちろん、Fletcherはコミュニティを持っていて他の国際関係大学院は持っていないという2極ではなく、他の大学院にも魅力的なカラーがある。Georgetown SFSとPrinceton WWSは規模感から必然的に皆知り合いになるし、Columbia SIPAも2年次に専攻を決めた後は50-60人の専攻グループ内で仲良くなるとAdmissionの担当者が言っていた。コミュニティ意識に対する見解は様々だと思うが、少なくとも個人的にはそれが強ければ強いほど良いとは思う。学生同士が繋がろうという意識があれば、学期中困ったときに助け合うことができるし、イベント事などで自然と協力し合うことができる。また、卒業後にもそのネットワークを友人関係においても業務関係においてもそれを将来活用することができる。
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