Fletcher考察: ① Fletcherと学問

Fletcherでのカリキュラムが終了し、学期中に起きた個別の出来事については一応書き終えた。これから5月末の帰国までは、Fletcherの特徴や今後の課題について、他校との比較を交えながら書いていくことにしたい。第一回目のこの投稿では、Fletcherのアカデミックな面における特徴について書いておこうと思う。

The Fletcher School of Law and Diplomacyという名前の通り、Fletcherのカリキュラムの中核を成すのは伝統的に法律系科目と政策系科目で、その中でも政策系科目の割合が圧倒的に多い。Fletcherの科目群はILO (International Law and Organization)、DHP (Diplomacy, History and Politics)、EIB (Economics and International Business)の3群に分類されているが、DHPの科目数が過半を占めている。EIBは経済学やビジネスに関する科目のニーズに対応して近年力が注がれている科目群で、経この中の済学入門や数学等の科目が2年制プログラムに在籍する学生の必修科目になっている。また、Master in International Business (MIB)という新しい修士プログラムが導入されるなど、注力分野として拡大が図られている。

他の国際関係大学院の中で政策系科目に重点を置いているのは、GeorgetownのMSFSで、教授会等では同校のプログラムの動向を強く意識した議論が為されているそうだ。その他の大学院ではFletcherに比べて経済学を重視する傾向にある。Johns HopkinsのSAISでは、2つの専攻のうち1つは必ずInternational Economicsとすることが課されている。ColumbiaのSIPAでは、1年次にCore Requirementとしてミクロ経済学や統計などの授業を全員が履修するカリキュラムになっており、2年次から専攻を選んで関心分野に注力する形を採っている。Harvard Kennedy Schoolでは、出願時に学部時代におけるミクロ経済学や統計の履修経験と成績を報告するよう求められ、入学後も経済学を軸にしたカリキュラムが課される。実際、SAISやKennedy Schoolにも合格したが、経済学が苦手だからという理由でFletcherを進学先として選択したた学生も存在する。Fletcherが法律・政策科目を軸とした運営を行うことに今後も変わりはないと思われるが、Georgetownのみならず、経済学を重視する他の国際関係大学院にカリキュラムを近づけようという意識が、卒業生向けアンケートの質問内容等からも伺われる。

法律・政策科目中心のFletcherにおいて看板と考えられている学問分野は、国際取引法、安全保障、紛争解決、環境資源政策等。これらの分野にはそれぞれ著名な教授が在籍しており、それぞれの教授に指導を受けるためにFletcherに進学してくる学生は多い。EIBの科目群では開発経済やマイクロファイナンスの人気が学生の間で上昇しているが、コアな経済学を教えるMichael Kleinを除いては、看板と考えられている教授は不在。EIBの科目履修を通じて人気分野の学問的な基礎を習得することはもちろん可能だが、複数の合格先を得た開発経済やマイクロファイナンス志望の受験生をSAISやKennedy Schoolから引っ張り込むだけのカリスマ性を備えた教授は、ILO、DHPに比べると乏しい。今後のFletcherの課題は、国際関係大学院の主流となりつつある経済学を軸としたカリキュラムの充実と、他の大学院に引けを取らない経済学の教授陣の充実にあると思う。
[PR]
←menuへ