国連のキャリア観

国連職員のキャリア観、求められる人材像について書いておきたい。国連でのインターンが始まる前から認識はしていたのだが、国連は民間企業のように就職してトレーニングを受けながら求められる人材に育っていくというシステムではない。それよりは、各分野で活躍している人材がそれぞれの知識と経験を持ち寄って国連に還元するというシステムになっていると言える。それ故国連では採用した人材を徹底的にトレーニングするような機能はなく、それぞれがOJTで業務を学びながら、そこに自分が前職や大学院で得たものを付加価値として足していくというプロセスになる。

給与体系、雇用契約期間等は長く働き続けるようにはできておらず、キャリアの中の一定期間を国連での仕事に割いてくれる人に最低限報いるという程度のものだと思う。もちろん国連内での昇進制度はあるし、昇進するにつれて給料も高くなるのだが、同じ部署で何年働いたら昇進する、または昇進試験を受けられるというものではなく、一定のポストで数年の経験をした後、より高いポジションの公募に対して応募し、書類選考、面接を経て採用されなければならない。より高いポジションを得られた場合は事実上昇進となるが、自分で応募して採用プロセスを経ないといけないので、転職するのと労力やリスクは変わらない。

また、国連は正規職員を雇用できるキャパシティが予算の都合から限られているため、短期のコンサルタントやインターンを継続的に雇っている。短期のコンサルタントは前項で触れたShort Term Consultancy(STC)と呼ばれるもので、期間限定のアルバイトのようなものだ。Fletcher、Columbia SIPA、Georgetown MSFS等の国際関係大学院を卒業した学生は、競争試験やJunior Professional Officer(JPO)といった自分達の出身国政府が公募する比較的安定的なポジションを得ようとするが、その枠はとても限られている上、競争試験に至っては合格後ポジションのオファーがあるまで3年待ちということもざらにあるため、STCを使って国連での実績を積もうとする。このポジションは期間限定のアルバイトのようなもので雇用が極めて不安定なのだが、国連志望者は圧倒的にSTCのポジション数を上回るため、悪い雇用条件にも関わらずかなりの応募がある。

実際、現在のインターン先でもMcKinsey出身のコンサルタントが極めて悪い雇用条件の中で丹念にレポートを作成している。前職の給料と市場価値は現在の国連での仕事に比べると圧倒的に高いが、それでも国連で働きたいという動機からか、熱心に仕事に励んでいる。こういうどう控えめに見ても対等でない雇用者と非雇用者の関係が、国連の業務を成り立たせている。こういった形の仕事は、本来本業で十分な収入のある人が余暇でNGOや地域団体の活動に参加するというような、副次的な社会貢献として成り立つものだが、国連の看板が安月給のフルタイムでも働きたいというインセンティブを持たせているように思う。

インターンに関しても雇用条件は良くなく、自分の例と同様、無給、渡航費滞在費無支給という形で国連の全機関が受け入れを行っている。投資銀行、コンサルティングファーム等、就職した場合の初年度給与を支払う場所はもちろん、米国政府や世界銀行グループでさえ一定の給与をインターン期間中は支給するシステムになっている。それらと比べると国連のインターンは人気が低くても仕方がないように思われるのだが、STC同様、各公募に対して相当な倍率のインターンの応募が寄せられる。自分の場合はニューヨークキャリアトリップでFletcherの卒業生である現在のインターン先のディレクターに会うことができたので機会を得ることができたが、そうでなければインターンを国連から取ることはできなかったかもしれない。実際、通常プロセスのみで応募した同級生は応募した国連機関からインターンを得られず、夏休みは旅行して時間を潰すことになっている。

この決して良いとは言えない雇用条件を呑んで国連で働くには、よほどの情熱や問題意識が必要だと思う。もしくは、金持ちの道楽的に暇な時間を国際貢献にでも充てるというような、収入や職業の必要性から一段落ちたところにある第二次的欲求に支えられるものでしか、国連で働くことの動機を支えることができないかもしれない。この世界に対し引き続きアプローチするかどうかはまだ決めていないが、入るとしたらよほどの覚悟を自分の中に持ってからにしたい。入るにしても、競争試験やJPO等、国連や日本政府からある程度将来を期待されているポジションで入りたい。そうでなければ国連組織内の重要なポジションに就いたり、生活するに十分な収入を得ることが一生できないまま、STC等の短期ポジションを転々とすることになる。どんな契約でもいいからとにかく国連、と思って勢いで入ってしまうと、他の収入機会を断ち切ったことを後から後悔してしまいそうだ。
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